*生地やのおじいさんが もういちまい
*わたしのためにえらんでくれた布は
*ピンクと茶と黄色のチェックのツイード
*これを仕立てて着なさい ・・・・・
*=岡島弘子詩集「洋裁師の恋・ドレスができるまで」より。
わたしは不器用で洋裁は苦手。
次姉が洋裁学校に通っていた頃
アルバイトしていた生地やさんで
わたしのためにえらんでくれた布は
少し厚地の白にひまわり模様の夏物の生地
帰省のお土産に夜なべして縫ってくれたのだろうか
ノースリブで白い襟のついた後ろファスナーの
ドレスのようなワンピースだった
そのワンピースを着て 庭の銀杏の木を背に
やわらかな色合いの 格子模様の和服を着た
母のかたわらに立ち 二人で微笑んで映っている
一枚の写真が脳裏に浮かぶ
あの写真は今どこにあるのだろう
あんな頃もあったのだ そう思うと
ここからまた一步踏み出せるような希望が湧いてくる