ちょうど今頃の季節だった
公園で尻餅ついたり
手をねんざしたり
泳いでいて
隣のレインに接近したり
「あぁ・・ママがが二人いるよ。」
って言ったのは、二学期が始って
間もなくのころだった
1989年9月
病名は小児悪性脳腫瘍
消えかけた11才のいのち
コスモスが満開だった
枯れるころ 病室の窓の外には
冷たい雨がふりつづいて
紅葉した銀杏の葉が 雨の中に
ひらひらと舞いはじめた
眺めながら「最後のひと葉」(*)
レンガの壁を這う蔦に
一枚だけ残った
真っ赤な葉を思い浮かべた
はじめての春 雪がたくさん降った
そんな日も
11才のいのちをランドセルにつめて
わくわくしながら
楽しみにしていた学校に通った
はじめは午前中の授業を受け(?)
給食前に早退 帰ると
そとめ鬼母のエプロンの裾を
つかんだまま 離さなかった
あのころのこころの内は?
おにわ~そと!
でも、休むことはいやがった
満開のさくらの木の下で
お花見したその年
はじめて
さくらの花の香りを知った
その瞬間 走った予感
時には失ったものを
数えてしまうけれど
この星に生まれ変った一日一日
精一杯生きてきた29年間は
「春のいのち」」の前奏曲
まーちゃん、みさちゃん、ちーちゃん、、
お元気ですか?
*タイトル「岡島弘子詩集・洋裁師の恋」より