川面が見たくなってバスに乗った。
今日は、首都圏1都3県に再び緊急事態宣言が出された初日。神奈川県も対象の1県である。どうしてこんな日に外出するのか?と問われれば、今受講している、詩の教室の、作品提出〆切日が迫っているのに、とんと詩が浮かんでこないまま、時間だけが過ぎてしまう怖さ。じっとしていられない気持ちに従って出かけたのだと答えよう。
午前十時台のバスの乗客はまばらで、目に入る範囲の人はみなマスクをして。下車する時も、譲り合い、密を避けるマナーが守られていて、久しく乗ったバスの印象からも いつもとは違う緊迫感が 伝わってきた。
急に冷たい風が吹いてきて全身を覆うようにして通り過ぎて行く。レンガの階段を幾つか上ると川面の見渡せる鴨池大橋に出るのだが、橋の手前から右折、川に沿って歩き始めた。しばらくすると、わたしの好きな、堰を流れ落ちる水音が聞こえてきた。流れ落ちる水面の先には、数羽のカモがぐるぐる円を描くようにしながら、キラキラ光る冬の陽を浴びて 流れと戯れていた。
河川敷にテントを張り お母さんらしいき人は本を読み
お父さんらしき人は子とボール投げをしている 家族らしい塊
母娘で走る姿や
風を切って自転車で通り過ぎていく人がいて
裸の木々は寒そうに見えてもじっとそこにそのままいて
ピッ ピッ と頭上を高く飛ぶ鳥も
自由で 宙は どこまでも広く 青かった
土手に並ぶ桜木の蕾は、まだ 固くつぼんだままで。その中に、毎年、一本だけ早く咲く桜木があったと 確信して歩いていく と 本当に二輪 ほころんでいる花を見つけた。去年とは違う「幸せ桜」「ボーイスカウト」の札が結んであって、守られているのだと思った。
始めて会った頃は
まだ とても幼さの残っていたその木も
今は そこにしっかりと根を張り
春 早く咲くための 支度を
整えながら成長し続けているのだろう
流れに戯れていたカモたちも ぷかぷかと水面に浮かんで
OLさんらしい3人が 楽しそうに会話しながら
わたしを追い越し 風をおいて走っていった
まだ陽は高い
帰りのバスも 程よい乗車率