彼女と会うのは何年ぶりだろう。
10年、いやもっと、14年か15年ぶりかも知れない。
その頃は、彼女も私も60才過ぎたばかりの頃だったか
ら、今思うと、二人とも まだまだ若かったね。
昨夜は、二人でその頃の話をして夜を明かした。
「ここで、ぼくは子供を育てたいと思ってるんだ。」そう
言っているのを聞きながら「あの時は、その相手が私だと
は夢にも思わなかったのよ。」と言って彼女は笑っていた。
「そうだったんだ」と気づいたのは何年か過ぎてから、い
やはっきりと捉えたのは今なのかも知れない、とも。「そ
れに、私は子供が産めない身体になっていたしね」とまた
笑った。
昼間はギャラリー、夜は住まいに変身。
そこは都内の公団1DKの一室。
それは、夜間の絵の教室の仲間と終了展をしていたとき、比
較的すいていた、いや、午後の二人だけの時の会話だったら
しい。そこに大学のころからの友人だと言うMさんが見えて,
二人で外出。その間彼女だけがギャラリーに残って電話の応
対などしていたらしい。「その時、ハーゲンダッツのアイス
クリームがお土産だったの。」そんなことも、特別なことと
は捉えられなかったらしい彼女。無理もないと言えば無理も
ないと、私も思うのだけれど、昔話を聞きながら、恋に色々
な色の恋があるのだとすればこんな恋を「黄色い恋」と呼ぶ
のだろうか・・?とふっと思った。
もし、気がついていたら、 私も「もう、絵の教室やめます。
って先生に手紙を書いたわよ。」と言ってまた彼女は笑って
いた・・・。